食べ物と汽車が好きな人のための書評

名作の中の食べ物、作家が好きな食べ物と旅を追って、本の森を歩こう

中落合 中太郎
(C)Chutaro.Nakaochiai
阿川家のひやむぎ 檀家のソーメン―「ああ言えばこう食う」by阿川佐和子&檀ふみ
JUGEMテーマ:グルメ

 <なみちゃん冷麦はギットギトでうまーい>

阿川佐和子さんの父、阿川弘之氏は大正9年生まれ。鉄ちゃんグルメでかつショートテンパーのオジサンとして周囲に怖れられている。

このブログでよく取り上げる「食味風々録」に阿川家のモットーともいうべきものを書いている。

要するに洋服を二着作る金があったら、一着分は食べてしまうのである。

それともう一つ、食べたくないときに食べたくない物を供されたら、言を左右にして食べないこと。(置土産より)

(旧かな遣いを現代仮名づかいにあらためています)

さて、その阿川家で愛されている冷麦、そうめんの一子相伝のつゆがある。

なみちゃんひやむぎ。

以下、青字は「食味風々録」より引用。

下谷の名妓として知られた おなみさんという旅館の女将さんから教わった。

おなみさんは出入りの植木屋から、

「あっしら、 夏場、さっぱりした物ばかり食ってたんぢゃ身体がもたねえもの」

、と持参の濃いつけ汁の作り方を教わった。

<なみちゃん冷麦レシピ>

牛蒡のささがきを始め、茄子やピーマンや、なるべくあくの強い野菜を生姜と一緒に刻んで、

熱した胡麻油で手早く、しかし、充分に炒め、醤油をたっぷりそそぎかける。

油の浮いたあつあつの色の濃いつゆが出来上がる。

ガラス器の中の氷でよく冷やして置いたまっ白のひやむぎをこれにつけて啜って食べる。

<つくった中太郎>

ゴボウ半分、ピーマン一個、ニンジン半本、茄子一本、生椎茸3枚をみじん切り。青唐辛子一本。根生姜小指大も刻む。

ミョウガ、シシトウやネギの青いところなんかのいいと思う。

あとは上記の通り。みりんや出し汁、つゆの素など一切入れない。胡麻油は必須。

原液は濃すぎるので適当にお湯や氷水で割る。

胡麻油の風味と野菜の香味がうまみになる。

これで2人前。中太郎夫人はこのツユが嫌い。好き嫌いはっきりでるが猛暑に俄然食欲が出る。

<檀ふみが死ぬ前に食べたい檀流ソーメン>

末期の私が望むソーメンは、限りなく細くなければいけない。

と、いって茹でるとあっという間にフニャフニャになってしまうようでは困る。少しばかりのコシが欲しい。


以下、青字は「往復エッセイ ああ言えばこう食う」阿川佐和子・檀ふみ共著より「律儀なソーメン」から引用。

檀家のソーメンのこだわりはこうだ。

もっと大切なのは、付け合せである。煎りゴマ、茗荷、シソなどの薬味。

梅干しを加えて煮出し、ほんのり酸味を加えた冷たいつゆ。

忘れてならない、氷。ガラス器。

それだけではない。ネギの刻み方に檀家には家訓がある。

「海苔は針のように細く切れ。ネギは紙のように薄く刻め」

<檀流刻み術>

料理用の大鋏を出し、パリっと焙った海苔を八つ切りにする。

そしてそれをキッチリ四枚ずつ重ねて端から丹念に切っていくのだ。それも「針のように細く」である。

さらにネギは、かくのごとくなければならぬと檀ふみさまは書く。

皿の上でキラキラと真っ白に光って、これがネギかと思うほど美しい。

絹糸のように細く、口に入れると、シャリシャリと絶妙の舌触り、歯応えである。

檀ふみさんの父、「火宅の人」檀一雄氏は単なるグルメではなく料理家としても一流で「檀流クッキング」という名著がある。

その血筋は兄の太郎氏の方にゆき、ふみには行かなかった。

ふみさんは、自分を下働きの「檀流クッキングの三等兵」と評している。

が、舌は幼い頃からグルメの父に鍛えられた。

したがってその舌を満足させるには相応の術がいるのである。


<お茶漬けが食べたいよー、と道にしゃがんで叫ぶ女優と深夜、米を研ぐキャスター>

女優檀ふみとキャスター阿川佐和子はパーティーの帰り、深夜、連れ立って歩いていた。

と、女優の父譲りの舌と胃袋が叫ばせた。「お茶漬けが食べたいよー」

「じゃ、ウチで食べてく?」

と、敏腕キャスターはいった。女優はキャスターの独り住まいに行った。

以下、青字は「往復エッセイ ああ言えばこう食う」阿川佐和子・檀ふみ共著より「米を研ぐ女」から引用。

「ウチで食べてく?」と誘ったのに、その台所には炊飯ジャーすらないのである。

要するに、私にお茶漬けを供するために、アガワは文化鍋を出し、米を研ぎ始めねばならなかった。

泣ける。

<中略>

一体なんだろう。

ジャリッ、ジャリッ!

不気味な音が部屋いっぱいに広がっているのだ。

見るとアガワが親の敵に相対するように、目を吊り上げ、歯を食いしばり、腰を入れ、全身の力を込めて米を研いでいる。

こうして女優は美味しいお茶漬けにありついたが…。

<グルメの父とムスメの法則>

檀ふみさんの父、一雄氏の「檀流クッキング」の書き出しに彼が料理をするようになった理由が書いてある。

父の仕事で栃木県足利市に住んでいた一雄少年はこどもだけで食事することが多かった。

毎日、仕出し飯をたべていたという。

京都のように仕出しがすばらしいところなら自分は料理などしなかった、と書いている。

一雄少年が包丁を握るきっかけは当時の足利の外食事情だった。

阿川佐和子さんの父、弘之氏は、昭和十年頃というから氏が15,6才の頃、

食堂車でコンソメ、白身魚のムニエル、牛肉のシチューを食べたいばかりに山陽本線の急行列車に乗ったというグルメである。

弘之氏はたまにステーキを焼いたりしたが、(ステーキは父の役目だった、と佐和子氏は書いている)もっぱら食べる人だったようだ。

そこがふみと佐和子の分かれ目なのか。

おやじの手料理の下ごしらえと後片付けをやらされたと両所とも書いている。



| 中落合中太郎 | 阿川佐和子 | 18:44 | comments(0) | - | pookmark |
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