食べ物と汽車が好きな人のための書評

名作の中の食べ物、作家が好きな食べ物と旅を追って、本の森を歩こう

中落合 中太郎
(C)Chutaro.Nakaochiai
足利事件冤罪事件はまた、起こる―東京地検特捜部民野健治検事の違法取り調べ10時間
評価:
上杉 隆,週刊朝日取材班
朝日新聞出版
¥ 1,260
(2010-04-20)

 <子ども人質に女性秘書「恫喝」10時間―週刊朝日2010年2月12日号>

 上杉隆さんの記事である。
ブログでは民野健治は有名人になっていた。おそろしい男だ。朝青龍どころではない。

週刊朝日の22ページからの上杉隆さんの記事から引用する(青字の部分は引用です)

1月26日(火)の昼ごろ、石川事務所(石川 知裕議員の事務所)に「タミノ」と名乗る男から電話があった。女性秘書に検察庁に来てほしいという。

女性秘書が、「きょうも押収品の返却ですか?」と確認すると、タミノは、「そうです。あとちょっと確認したいこともあるので」と返した。

よく聞き取れなかったので(女性秘書は)、もう一度確認すると「返却です」と答えた。


上杉さんの記事によると、1月22日と25日の2度、検察が家宅捜索で持っていった押収品を返却するといって、女性秘書が霞ヶ関の検察庁に取りに行っていたので、彼女はまた、そうだろうと思った。

(女性秘書は)
コートも着ずに薄着で出かけた。ランチバッグの中には千円札と小銭、ティッシュとハンカチ、携帯電話だけである。

前回とは話が違った
検察庁につくと民野健治が待っており、いきなりこういった。
「被疑者として呼んだ。あなたには黙秘権があるので行使することができる。それからー」

女性秘書が、他の秘書か弁護士に連絡したい旨を告げると、民野検事はそれを無視して、携帯電話の電源を切るように命じ、目の前でスイッチオフさせたのだ。それが昼の1時45分、だまし討ちの「監禁」はこうして始まった。

これはヤクザのやりかただ
任意の取調べはもちろん、任意だから拒むこともできる。その場を立ち去っても問題はない。彼女は取り調べであるとも告げられず、民野に監禁されたのである。

監禁10時間。こどもも迎えに行けず、夫にも連絡できず
「なんでもいいんだよ。何でもいいから認めればいいんだよ」
「早く帰りたいなら、早く認めて楽になれよ」
「なんで自分を守ろうとしないの。石川をかばってどうするの」

民野検事が執拗に供述をせまる。女性秘書には弱みがあった。

3歳と5歳の子どもが待っている保育園に迎えに行かなければならない。少なくとも保育園の閉まる午後7時には、夫でも誰でもいいから迎えに行かなければ、幼い子どもたちが心配するだろう。

上杉さんは抑えて書いている。
3歳と5歳のこどもにとって母親が迎えにこない。何も連絡がない、ということがどんなに切なく、恐ろしいことか。それがわかるから女性秘書もつらい。
民野検事はその弱みをついて「なんでもいいから」検察に有利な供述をするように迫ったのだ。


女性秘書は検事に対して、繰り返しお迎えの許可だけを懇願する。一時的でもいい、必ず戻ってくる、せめて電話をいれさせてほしいと哀願し続けたのだ。

それに対して民野は言い放つ、
「そんなに人生、甘くないでしょ」

水戸黄門の悪代官の話ではない。
戦争中の特高警察やナチスの拷問の話ではない。
平成22年の東京地方検察庁の話である。

ナチスの秘密警察まがいのはなし、続く。
ちょうどそのころ、検察庁から(石川事務所に)一本の電話が入った。
「○○さん(女性秘書の名前)からの伝言です。きょうは用事があるので事務所には帰らないとのことです」
と、男の声で名前も名乗らず、それだけ言うと一方的に切れたという。

これでは誘拐犯の電話だ。
民野検事か検察事務官が民野にいわれてかけたのだろう。
国家試験をパスした検察事務官は民野検事のやりかたが違法かつ違憲であることは分かっている。

木村拓哉主演の「HERO」が人気で松たか子演じる検察事務官の志望者が増えているそうだが、現実の検察事務官はこんな違法捜査の片棒をかつがされるのだ。

かつてソ連では、夜中に「ちょっと話が聞きたい」と男が訪れ、「何かのまちがいだからすぐ帰るから」と夫が言い残して連れて行かれ、そのまま帰らない、ということがあったとソルジェニーツィンの「収容所群島」にある。

民野検事いや東京地検というところはそういうところだったのか、と背筋が凍る。


この母親が何百回、同じ哀願を繰り返した頃だろう。ようやく検事が、
「じゃあ、旦那にだけは電話していい」
と、認めた。検事の目の前で携帯のスイッチをオンにし、画面に夫の電話番号を表示し、それを見せながら、発信ボタンを押した。子どもの迎えだけを頼んだ。

弁護士が、検事と「聴取」の中断を交渉し、午後10時45分、事務所を出てから約10時間ぶりに女性秘書は「監禁」から解放されたのだ。

検察は変わっていない。
足利事件で宇都宮地検と栃木県警は菅家さんに謝罪した。
その後、菅家さんを取り調べた当時の森川検事は再審公判でうその供述を菅家さんにさせたことについて「まちがっていない」と謝罪を拒否した。

民野検事の「聴取」は上杉さんによると、
2008年に最高検が出した「検察における取調べ適正確保方策」に関する諸通達では、長時間の取調べ、休憩なしの聴取などを禁じている
今回の監禁はこれに明白に違反している。

それ以前に逮捕状もないのにうそをついて女性を連れ出し、監禁し、自己の都合のよい供述を取ろうという民野検事の行為は刑事訴訟法違反である。

刑事訴訟法198条1項
 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。

但し、被疑者は、逮捕又は拘留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。

この文言が有名無実であることはなんども繰り返される冤罪事件で証明されている。
検察は必ずしも正義でも完全無欠でもない。

小沢幹事長不起訴の隠れた理由
憲法第38条
第二項 強制、拷問もしくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。

石川議員逮捕は、まぎれもなく小沢幹事長がターゲットであった。
石川議員のさらにその秘書に対して、憲法違反、法律違反の取調べをして証拠を得ようとした強引な検察の手法を知ると、逮捕されている石川議員、大久保秘書らへの取調べの違法性は推して知るべしである。

民野健治のような検事がたくさんいて、検察に有利な供述を得ようとしたのはまちがいない。
ところが上杉さんによってその一端が明るみに出たことにより、検察の得た供述の正当性がいちいち公判で吟味されることをおそれて、上層部がイケイケの特捜部にストップをかけたのではないか。

検察としては石川議員らの裁判が長々と続いて、たとえ無罪確定となっても、記者クラブメディアが小沢氏バッシングを続けてくれて小沢氏や民主党が不利になればそれで成功である。

恐ろしい新聞、テレビなど記者クラブメディアの検察権力迎合

中太郎は1月27日に記者クラブメディアについて書いた。もちろん、上杉隆さんに触発されたのだ。石川事務所の違法強制捜査は新聞、テレビメディアが石川事務所を張っている目の前で行われたのに彼らは一行も記事にしていない。

検察をチェックできるのはマスコミだけだ
民野検事を違法捜査の罪で告発することは可能だ。しかし、民野を捜査するのは東京地検である。「そんな事実はなかった」の一行で終わるのは明白だ。

取調べ可視化に反対した新聞
民主党は足利事件再審開始決定の昨年から取り調べの可視化を求めていた。新聞も賛成の論調だった。難色を示したのが検察、警察であった。ところが今年になると、可視化は捜査に対する圧力だと新聞はいっせいに反対した。

なぜか。
検察にタテを突けば、リーク情報から締め出されるからだ。しかし、それは本末転倒だろう。目の前のスクープ欲しさに検察権力から国民の生命、身体、財産の自由を守るための可視化である。どうしてそういう視点で記事を書いてくれないのだろうか。

検察には説明責任を求めない「司法記者クラブ」という出入り業者たち
小沢幹事長には執拗に「説明責任」を追求する新聞テレビメディアだが佐久間特捜部長の木で鼻をくくったような会見にはお説ごもっともとなにもいわないのはなぜだろうか。


石川議員の女性秘書のようなことは自分にも起こる

そういう危機感を持って記事を書く記者はいないようだ。ほんとうにおそろしいと思う。
| 中落合中太郎 | 上杉隆 | 18:07 | comments(0) | - | pookmark |
リークでなければ捏造ですか?−「ジャーナリズム崩壊」上杉隆
 <NHK担当者クビとリーク問題>

 視聴者からの「リークはあるのか」という質問に対して「リークはある」と答えたNHKの担当者が解雇された。これは一連の小沢幹事長の資金管理団体の政治資金収支報告書への不記載問題と現在の「見てきたような取調べ報道」と大いに関係がある。

 石川衆議院議員、大久保秘書は現在、収監されて取調べを受けており、取調べの内容は検察官、検察事務官など捜査担当者しか知ることができない。

そのほかに知ることができるのは石川議員や大久保秘書に面会できる弁護士ということになるが、ニュースになるのは検察に有利な話ばかりなのでそれ以外のソースでなければならない。

<検察官らには国家公務員として法律上の守秘義務がある>
 
取調べに当たっている検察官らには国家公務員法で守秘義務があり、取調べを記者にべらべらしゃべることは法律で禁じられている。

<取調官しか知ることができない話が報道されそれがリークでないとすると創作か盗聴?>

 報道機関に対するリークはないとするとNHKや新聞社の「関係者によると」とか「検察関係者」によれば、という報道は、どういう意味をもつのか、わからない。

取調官以外の「関係者」の話を総合して報道しているとするならば、「関係者」の話を聞いて作った作文ではないか。

私は以前、日本の新聞記者は超能力があっていろいろなことが突然「わかってしまう」という上杉隆さんの「ジャーナリズム崩壊」という本を紹介した。

東京地検特捜部のとんでもない実態について上杉さんが話しています。
ポッドキャストで聞けます。
TBSラジオ 小島慶子キラキラ1月26日放送
http://www.tbsradio.jp/kirakira/3pm/

以下、その内容についてかいつまんで書きます。

<検察の脱法捜査とそれを報道しない新聞記者>

取調官と石川議員それに代理人である弁護士以外知りえない情報が取り調べ直後にニュースが流れる。検察のリークでないとすると、なんなのか。記者の頭の中に突然電波が飛んできてわかるのか?

検察は逮捕令状なしに議員会館に入って家宅捜索をした。
石川議員には乳飲み子を連れて出勤している女性秘書がいる。その女性秘書を検察に呼ぶぞ、それでもいいのか、と脅す。

<検察に出入り禁止を食らうのがこわい>
これらを司法記者クラブの記者たちは知っているのに一行も書かない。

「関係者によれば」と書いているうちは無事。
「検察関係者」、「東京地検関係者によれば」と書くと出入り禁止になる。なぜなら、自分たちがしゃべったことがわかってしまうから。

以上が内容の一部です。上杉さんの肉声できけます。

新聞が書き立てる、検察イコール正義、小沢イコール悪
という図式を信じるのは、その人の自由だが、検察を止めるものは何もない。前回書いたが政府民主党は権力であるが、国会の場や記者会見を通じて、その見解をつねに明らかにする。

しかし、東京地検特捜部はこの問題で公式な記者会見を開かないまま、大久保秘書、国民の代表である石川議員を拘束し、取り調べた内容について、公には何も発表していない。

にもかかわらず、あたかも見てきたような取調べ情報が連日、ニュースとなる。これを正すべき大メディアはなく、特捜部をコントロールできるものはなにもないのだ。

その刃があなたのほうを向かないとはいいきれない。


小沢幹事長が権力者であるとしても、彼が、あなたに容疑をかけ、逮捕し、何十日も拘留し、あなたの家や仕事場を捜索し、家族を尋問する権限はない。

小沢氏が圧力めいた言動をすれば、マスコミや国会は彼を即座に批判するであろう。

ところが検察があなたの生命、身体、財産に対して、圧迫を加えても、それを直ちにコントロールできる仕組みはないのである。

<マスコミは足利事件報道で検察一辺倒を反省したのではないのか>

足利事件の菅家さんは最終的に自由を得た。裁判所によって、検察の違法な行為から逃れた。しかし、かれの過去は帰らない。いかなる補償がおこなわれてもそれを取り戻すことはできない。

検察というのはそういう権力だということ頭において現在のマスコミ報道を見直してほしい。

ゴマメのはぎしりだが。
| 中落合中太郎 | 上杉隆 | 21:36 | comments(0) | - | pookmark |
シルバーウィークと八ッ場ダム報道の金太郎アメ状態―「ジャーナリズム崩壊」by上杉隆
<シルバーウィークに関係ないやつらが作るシルバーウィークのニュース> 

政治家が「庶民の感覚で政治をやりたい」とかいう。

庶民でないからいえる言葉だろう。中太郎もシルバーウィークでふだん見られない昼間のテレビをずいぶん見させられた。

 新幹線のホームにカメラを上げて、乗客に、
「どちらまで行かれるんですか?」

「福岡まで」

「混んで大変ですね」

 羽田の出発ロビーに行って、

「どちらまで…」
「札幌です」

「大変ですね」

 高速の上空にヘリ飛ばして、

「こんなに渋滞しています。東名はなん十キロ、東北道は何キロの渋滞と発表になっています」

 去年の映像をアーカイブから出してきて流したら安くつくだろうに。

年末年始、ゴールデンウィーク、お盆、全部同じでしょう。

 連休、関係ない連中ばかりで連休のニュース作るとこうなるんだろうね。

わかんないもんね。自分ら普通に仕事してるんだもんね。

たぶん、何十年も前から、「連休報道マニュアル」が出来ていて、そのとおりにやらないと、お叱りがあるんでしょう。

酒井法子被告人報道も然りである。



 <これは報道か?ジャーナリズムか?ここになにか意義があるのか?>

フリージャーナリストの上杉隆さんはニューヨークタイムズ東京支局勤務のとき、全日空機ハイジャック事件が起きた。

現場に向かうという上杉さんにクリストフ支局長は「無用だ」と止めた。

「状況をつたえるだけなら、共同や時事通信など通信社で十分だ。

新聞はほかに伝えるべきことがある」というのだ。しかし、日本の新聞社、テレビ局は殺到した。

<われわれは何が知りたいか。なにをジャーナリストに期待するか>

かつて、ホリエモンが「ニュースなんかネットで見れる。

新聞なんかいらない」といって、報道に叩かれたが、現にそうなっている。

テレビも「NYタイムズの電子版によれば」と涼しい顔でネットニュースを流している。

このブログを見てる人なら、なにか興味がある事件が起きたらテレビのニュースを待つより、グーグルやヤフーのニュースサイトを開くだろう。

現象だけなら新聞よりテレビよりネットが早い。

しかもそのソースはたいてい新聞社だ。

いまのテレビ、新聞の手法ならだれも金を出して新聞を買う必要はなくなる。

現象よりもさらに踏み込んだものがなければ既存メディアはほろびると思う。

しかも現在はその「踏み込んだなにか」もネットのほうが先行している。

<広告主は宗教と弁護士>

 さいきん宗教団体の新聞広告が増えたと思いません?

サラ金よりサラ金問題解決の弁護士事務所の広告が多い。とくにラジオ。

これはソースがあきらかでないので断定しないが、企業のテレビ、ラジオ、新聞などへの広告出稿が激減しているそうだ。

不況の影響もあるが、マスメディアの広告効果に疑問を持つ企業が増えている。

視聴率が高いから購買力が上がるという関係も説得力がなくなっているそうだ。

それでは広告しないのか?ネットにシフトしているのだ。

いわゆる既存マスコミの空洞化現象はかなり深刻らしい。

メディアはメディアを報道しない)

しかし、こういう問題は絶対、既存メディアにはでない。

それは新聞社とテレビ、ラジオ局がすべて提携関係にあって報道しないからだ。

である以上、コメンテーターなどフリーの人もこわくて触れない。

例えば、日テレを怒らせたら、読売新聞にも書けない。

TBSだったら…。このマスコミの寡占状況もヤミといえるだろう。

(報道のステレオタイプは誰がやらせているのか)

 8月15日に靖国神社で政治家を待ち伏せて、
「公人ですか?私人ですか?」

て、聞いていたアレ。最近はやめたけど、インタビューするほうも、アホらしいと、思ってるだろうね。

でも、デスクが「聞いて来い」っていうから、やってる。

麻生さんなんか、もろに、
「バカかこいつら」

と、いう顔で記者の質問に答えていたけど、そう思いたくなるよね。

ぶらさがりの記者は新人が配属されるそうで、上司に命令されたとおりのことを聞いてる。

記者も気の毒だ。

こういうことをやらないとニュースでない、これをやらないと死ぬとでも各局の編成部長さんは思っているのだろうか。

こんなことを視聴者や読者は喜ぶと本気で思っているのだろうか?

 アメリカの大統領の記者会見には、90歳くらいのおばあさんの名物記者がいて、席まで決まっていると聞いた。

ブッシュさんのときは、お気に入りの記者がいて、その人の質問を一番先に聞くとか、各社腕利きの記者が陣取るそうである。

日本では、総理番は若手と決まっている。

国政の最高責任者の発言をペーペーに取材させる伝統はオカシイと思いませんか。

ジャーナリズム崩壊 (幻冬舎新書)
ジャーナリズム崩壊 (幻冬舎新書)
上杉 隆

<八ッ場ダム報道に見るジャーナリズム不在>

八ッ場ダムも前原国交大臣が現地に行ったので、ちょうど、連休のニュースになった。

八ッ場ダム問題の料理の仕方はどの局も同じようだ。

 現地の旅館組合の役員で旅館のご主人が出てきて、

「移転先も決まっている。57年ももめて決まった。ダム湖畔で営業したい。みんな、困っている」

 長野原町長と群馬県知事。
「何千億もかけた。ダムを作れ」

キャスターが

「地元のみなさんはお困りです。建設中止ではみんなメイワク」

みたいにまとめる。コメンテーター(へんな商売がある)の先生方も、旅館組合に同情する。

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| 中落合中太郎 | 上杉隆 | 08:17 | comments(0) | - | pookmark |
政治資金規正法が政治家の世襲制度を守る―『世襲議員のからくり』by上杉隆(文春新書)
<異常に多い世襲議員>本書によれば麻生内閣の大臣18人(やめた中川財務相を含む)のうち12人が世襲議員である。父や祖父が大臣だった大臣は9人。森法相の父美秀氏―環境庁長官、金子国交相の父一平氏は蔵相、中川前財務相の父、一郎氏は科技庁長官、石破農相の父、二朗氏は自治相、野田消費者担当相の祖父、卯一氏は建設相である。祖父が首相だった麻生総理、鳩山総務相。父が首相だった中曽根外相、小渕少子化担当相である。県会議員の父の地盤を継いだ河村官房長官と二階経産相を含めると二世政治家でない閣僚はたったの4人である。自民党の二世議員の比率は40%である。郵政解散による小泉チルドレンの大量当選で二世議員の比率が大きく下がった数字がこれである。但し、地方議員や首長が親族にいる自民党議員の数は51.6%だそうだ。国会議員の2人に一人は世襲政治家という自民党に比べると民主党の世襲議員は20%と低い。では、諸外国はどうか。アメリカの5%などイギリス、ドイツなどかなり低い。イギリスにもチャーチルのような三代に渡る政治一家もあるが、新人候補は有力な対抗馬のいる選挙区にまわされるので大概、一敗地にまみれる。親の選挙区からすんなり出馬するというわけではないようだ。イギリスの候補者選びやドイツの選挙制度などにも本書は言及している。

世襲議員のからくり (文春新書)
世襲議員のからくり (文春新書)
上杉 隆

<なぜかくも世襲は行われるか>選挙は三ばんといわれる。地盤(後援組織)、看板(知名度)、カバン(資金)である。父親と同じ苗字の息子が後を継げば、特に名前を浸透させる苦労はいらない。それにたいてい、息子は父の議員秘書をして、後援者と接触があるから知名度は申し分ない。後継者が秘書や傘下の地方議員になる場合、後援会が別の候補を推して分裂する危険がある。その点、息子、娘ならそっくりそのまま、組織が使える。これは中太郎もわかる。しかし、なににもまして、最大の理由は、政治資金の「相続」が容易であることである、と著者上杉隆氏は力説する。

<相続税のかからない事業承継、遺産相続>
自民党の支持者には農家や個人事業主、中小企業のオーナーが多いのではないか。彼らにとって悩みの種は如何にして、農地を、会社を、事業を、つつがなく後継者である息子あるいは娘に承継させるかであろう。日本の相続法と相続税法は日本の農家や老舗を抹殺することを主目的にしているかのように農家、個人事業の承継に対して過酷である。いわく均分相続、いわく、相続税である。しかし、そんなことはどこ吹く風という事業者がいるのである。政治家「事業者」である。
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| 中落合中太郎 | 上杉隆 | 06:12 | comments(0) | - | pookmark |
超能力新聞記者があふれる日本のマスメディア-『ジャーナリズム崩壊』上杉隆(幻冬舎新書)
<「わかった」記事>
いささか古い例で恐縮だが10月6日付の読売新聞夕刊東京版第4版14面にこのような記事が出た。

福祉割引便乗DM郵送印刷・通販会社「ウィルコ」が神戸市や大阪府吹田市などの障害者団体が発行する定期刊行物に自社の通販商品を宣伝するダイレクトメール(DM)広告を同封して大量に郵送していたことがわかった。
この記事の内容はショッキングな出来事だが、どうしてわかったのかわからない。事件であれば県警の発表によれば、とかあるいは政府の発表であれば麻生総理大臣が語ったところでは、というようにどのようにして「わかった」のか記事からわかるはずである。ところがこの記事ではまるで江原啓之さんか美輪明宏さんばりに突然、天の啓示か透視術でウィルコという会社がやっていることが記者に「わかった」ことになる。

皆さん、新聞だけでなくテレビ、ラジオでも普通に「〜であることがわかりました」という報道を聞いていると思う。しかし、どうしてわかったのだろう、と不思議に思いませんか?最近の例では、「緒方拳さんが10月5日になくなっていたことがわかりました」という報道があった。

福祉割引郵便DM便乗のニュースが読売新聞になぜわかったかといえば、それは10月6日の朝日新聞の朝刊1面および社会面に「郵便の障害者割引悪用」という朝日新聞の上沢博之記者と野村周記者の署名記事が出たからである。ウィルコという通販会社は障害者団体が発行する印刷物には大幅な割引(120円が8円になる)があることに目をつけて、自社のDMを同封して大量発送していた、という記事である。記事の内容から上沢記者らは長期に渡って取材を続け裏づけを取った。朝日新聞のスクープである。

読売は朝日の朝刊を読んで「わかった」ので、それを自社の夕刊に「わかった」と掲載したのであろう。だけどさあ。そんならオレとおんなじジャン。「新聞で読んだんだけどさ。ウィルコがね」と中太郎がカミさんに話しかける。いや、中太郎のほうが読売新聞より品格がある。すくなくともオレは「新聞で読んだんだけど」とソースを不完全ながら明らかにしている。しかも、金はとっていない。読売は朝日の朝刊を読んで、朝日のアの字も書かないで夕刊を売って金もうけしているのだ。同じ新聞記者なら上沢さんや野村さんがどんなに取材で苦労したか想像できるはずだ。「朝日新聞の上沢記者らの取材によると…」と夕刊に書いてあげたっていいじゃないか。お互いスクープを抜いたり抜かれたりだ。同業者として、スクープされた悔しさは悔しさとして、ライバルを讃えったってバチは当たらないぜ。

<欧米ではクレジットを出さないで記事を掲載したら訴訟の対象になる>
上杉隆著『ジャーナリズム崩壊』幻冬舎新書によれば、欧米では「情報源が著しい不利益を被る。生命・身体の危機が及ぶといった理由」がなければ、情報源を隠す事は犯罪的行為だ、ということだ。前の例は新聞対新聞の話だが「わかった」報道の多くは週刊誌メディアからわかることが多いという。そして、もちろん、週刊誌にはひとことの挨拶も無い。
ジャーナリズム崩壊 (幻冬舎新書 う 2-1)
ジャーナリズム崩壊 (幻冬舎新書 う 2-1)
上杉 隆

どんな著作物にも著作権がある。ブログにも子供の作文にも著作権はある。いわんや、記者が地味な取材をして発表した記事は当然著作物として保護される権利がある。著作物で生活しているジャーナリストがそれを知らないはずが無い。なのに他人の著作権を日本のマスコミは大切にしていないのではないか?

アメリカのマスコミはそうではない。自社の記者に対しても記事にその名を記した署名記事がほとんどだという。本書第3章によると、「ニューヨークタイムズはその記事にかかわった代表的記者を1名記す、ワシントンポストは全員記す。30ワード程度のベタ記事のような場合には、ときに記者の氏名とタイトル(肩書き)のほうが本文より長くなってしまうことがある」とのことである。と同時に日本の新聞社の集団主義とアメリカの記者の個人主義の違いがある、と本書は分析している。アメリカでは、「Takashi.Uesugi,New York Times」と名前を先にいう。日本の場合は、「朝日新聞の○○です」あるいは「朝日新聞です」と社名を先に言う。記者個人の名前は隠す傾向がある。
<記者会見で記者を見よう>
東京MXテレビが見られる人は金曜日の午後3時頃から石原都知事の記者会見中継がある。知事の話もおもしろいが質問する記者がどう名乗るか、いい質問か、アホな質問か、素人目にもわかる。MXテレビに頼みたいのはぜひ記者席を写すカメラを置いてほしい。質問する記者がどういう顔で聞いているのか見たい。知事が来たのに全く質問がないときもあった。国政や芸能ネタにも答えられる石原氏に質問が全く無い、ということはないだろう。
福田前総理が「私はあなたとちがいますから…」といったといって揶揄されたが、こんなアホが記者か?と思うような奴もいるのである。ホンマはもっといろいろいいたいんじゃないかな。その点、石原さんは、
「あんたわかって質問してんの。そう聞けっていわれて聞いてんの」
などと記者をイジるから面白いよ。その記者会見を主催する記者クラブが厄介だと上杉氏はいう。
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| 中落合中太郎 | 上杉隆 | 06:17 | comments(2) | - | pookmark |
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