食べ物と汽車が好きな人のための書評

名作の中の食べ物、作家が好きな食べ物と旅を追って、本の森を歩こう

中落合 中太郎
(C)Chutaro.Nakaochiai
熟年の皆さん。筒井康隆を読んでいましたか?-愛が先か食い気か『霊長類南へ』筒井康隆<角川文庫>
前号で、新聞記者をこき下ろしたので、今回は記者魂というか記者根性のある新聞記者の本について書く、といってもフィクションの世界であるが。核爆弾とかベトナム戦争とかをエロとおちゃらけをふんだんにちりばめて書いたのが60年代の筒井作品である。『ベトナム観光公社』『農協月へ行く』『アフリカの爆弾』『俗物図鑑』。中太郎が筒井作品を読み始めたのは72年くらいからで遅い方である。きょうは『アフリカの爆弾』にふれないが今、ほんまにアフリカの爆弾状態になっちゃってるよなあ。アフリカより中東の爆弾だよなあ。

<世界の終末と恋とセックスと>
 お堀端にある毎読新聞社会部記者の澱口襄(おりぐちじょう)25歳は、ファッションモデルの香島珠子と葉山マリーナで休暇を楽しんでいた。ところが彼の男性機能がうまく彼女と調和しない。 ソーローといわれ愕然とした澱口襄はそれを彼の空腹のせいにする。そしてルームサービスを呼び出した。
「歯にしみるくらい冷えたコンソメと胡椒をたっぷりふりかけて焼いたサーロインステーキの生姜焼きだ。それに野菜サラダ。ぜんぶ二人前だ。ポットコーヒーには何杯分入る」
「三杯分です」
「では、それをふたつだ」
(『霊長類南へ』より)
 その少し前、シェンヤン(瀋陽)の人民解放軍のミサイル司令部では高級技術将校の劉早晨と邱白天、「解放軍報」の新聞記者杜傍晩が殴りあっていた。富裕層出身の劉早晨がたたき上げの邱白天が毛主席の肖像がかかれた下着をはいていることを揶揄したからだ。
この場面の北京語(ルビつき)は見事だなあ、筒井さんもたいしたもんだなあ、と感心していた。が、邱白天が「小畜生」といいながら劉早晨にかかっていくくだりで「やられた」と思った。
 さて、殴り合っているうちにお定まりで杜傍晩の体が核ミサイルのコントロールパネルに倒れ、赤いボタンがおされてしまう。
 中華料理店の装飾のような毒々しい赤と緑と金色に塗り分けられた三基のミサイルが発射されてしまう。それは在韓米軍の水原基地、在日米軍の三沢基地とソ連のウラジオストクに命中する。中国にそんなミサイルがあると信じないソ連首相はアメリカの仕業と確信。サンフランシスコにICBMを打ち込む。アメリカはボルゴグラードに報復すると告げる。筒井SFファンおなじみの壮大なパイ投げ、壮大なドタバタが幕を開けた。

<ほんものの新聞記者>
 さて、葉山マリーナの澱口襄と香島珠子は、ステーキを食べてから激しく愛し合うのだがBGMにつけていたFMラジオが突然音楽を中断して、三沢市にとんでもない爆発が起きて自衛隊が出動したと告げる。澱口襄はすぐ、社に帰ると言う。せっかくの休暇なのにといぶかしがる珠子。澱口はいう。
 せっかく半休をとっていながら、なぜ社へかけつけなければならないのか―それはオレにもわからなかった
21世紀の珠子と澱口ならラジオをBGMにする必要はなかったろうがこの作品の初出は1969年である。もっとも臨時ニュースが出る前にデスクから携帯で呼び出しが来てるかな?
霊長類 南へ (角川文庫)
筒井 康隆
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| 中落合中太郎 | 筒井康隆 | 06:24 | comments(0) | - | pookmark |
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