食べ物と汽車が好きな人のための書評

名作の中の食べ物、作家が好きな食べ物と旅を追って、本の森を歩こう

中落合 中太郎
(C)Chutaro.Nakaochiai
アメリカの鉄道復権! 『新編南蛮阿房列車』その2
 吉行さんに振られた阿川さんはサンセットリミテッドに乗るべくロサンゼルスの下町、ユニオンステーションにやってきた。

構内不潔で薄暗く、乗る前からくたぶれきったような大荷物の黒人夫婦、ヒッピー、浮浪者、口の中で絶えずブツブツいっているアルコール中毒らしい婆さん。饐えたような異臭が匂う。

『夕暮特急』のロサンゼルス・ユニオンステーションの描写である。航空機と車の国アメリカで落ちぶれてしまった大陸横断鉄道を象徴するくだりである。ロサンゼルスを22時30分に出発。阿川さんの席はルーメットという個室寝台。翌朝5時頃に目覚めた阿川さんの車窓にはアリゾナの大平原がひろがる。

地平の朱は微妙に変化しつつオレンジ色になって、やがて大きな日が昇る。山も無く川も無く雲も無く、灰色の土がセージブラッシュにおおわれて何処までも何処までもつづいている。

セージブラッシュはヨモギ科の草とある。日が昇り、アリゾナの太陽がぎらぎらし始める頃、阿川さんは、食堂車の昼飯にカナディアンサンセットすなわちレッドアイを注文するがウェイターはその名を知らなかった。相席のフィリピン人の女の子に「天皇様は神様だと日本人は思っているのか」と聞かれて説明(この説明はいいですよ。但し、英語で覚えないとね)しているうちにテキサス州に。メキシコ国境のリオグランデが見えてくる。川で泳いでいるメキシコの子供や家々が見える。そしてエルパソ着。テキサスの日没を見て、夕飯に食堂車にいくと、「もう終わり」といわれる。阿川さん、2度目の標準時変更を忘れていた。押し問答の末、ローストビーフとサラダ、じゃがいもと豆の夕食にありつく。意外や意外。うまい!相席のアメリカ人のローレンス仙柴さんというおじさんと意気投合。しかも仙柴さんの奥さんは日本人。翌朝、阿川さんはメキシコ国鉄に乗るためサンアントニオで降りる。<続く>
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| 中落合中太郎 | 阿川弘之 | 06:22 | comments(0) | - | pookmark |
レッドアイは二日酔いの眼?『新編南蛮阿房列車』阿川弘之 その1
7月27日の読売新聞日曜版に阿川佐和子さんが「吉行さんごめんなさい」という一文をよせている。故吉行淳之介さんがよく飲んでおられたレッドアイというカクテルが不味かったという話である。

レッドアイはビールとトマトジュースを半々。二日酔いに効くというので吉行さんが愛飲していたという話を和田誠さんから聞いて佐和子さんも飲んでみたがイマイチだったそうである。

中太郎はレッドアイについて、ずうっと昔に、佐和子さんの父上の阿川弘之さんの『南蛮阿房第二列車』という紀行集のなかで読んでいた。『南蛮阿房第二列車』はすでに絶版だが姉妹編の『南蛮阿房列車』との2冊から著者が寄りぬいた作品が『新編南蛮阿房列車』(光文社文庫)として刊行された。その中の『夕暮特急』という作品のなかでレッドアイが紹介されている。

吉行淳之介さんは、作品に『上野毛の毛蟲』という名前で登場する。吉行さんは体調不良で銀座でトマトジュースばかり飲んでいたが女の子にこのカクテルを勧められた。いわれたとおりビール4分、トマトジュース6分で飲んでいた。
以下、上野毛の毛蟲こと吉行さんのせりふ、

案外うまいんだ。ただし、色が二日目のあれを連想させるいやな色でね、<中略>僕は月経ビールと名づけて爾来、愛用するようになった。

二日目なのか三日目なのか吉行さんじゃないと区別がつかないだろうが、その後月経ビールもなんなので、その頃、研ナオコさんのCMで有名だった『チャームナップミニ』と改名して、一人愛用しているうちにアメリカ人に、
レッド・アイといってアメリカでいま流行っています、とオリジナルの名前を教えてもらったそうな。<続く>

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| 中落合中太郎 | 阿川弘之 | 17:14 | comments(0) | - | pookmark |
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